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三原市における学校適正配置について(報告書)

記事ID:0001752 更新日:2014年2月17日更新

はじめに
I.三原市立小中学校の配置に係る現状と課題
 I-1 学校の配置と通学区域について
 I-2 学校規模(児童生徒数・学級数)について
 I-3 三原市立小中学校の適正配置に係る課題
II.アンケート結果から見る市民の意識
 II-1 アンケート調査の概要
 II-2 市民の意識
III.三原市における学校適正配置にむけての提言
 III-1 学校適正配置の理念
 III-2 適正配置によって実現をめざす学校のあり方
 III-3 適正配置実施にあたっての具体的な留意点
おわりに

三原市における学校適正配置について(PDF版)

はじめに 

 三原市内の公立小中学校は,平成15年度現在,小学校18校,中学校8校が存在する。児童数は全小学校で4000名弱,生徒数は全中学校で2000名余りであり,児童生徒数は20年程前から徐々に減少し続けている。
 少子化により,現在までに,鷺浦町内の3小学校を1校に,幸崎町内の3小学校を1校に統合するなどしてきたが,少子化傾向は加速し,学級数の減少する学校や複式学級になる学校が増えてきた。
 三原市教育委員会では,学校のIT化や学習指導要領改訂に伴う教育環境整備に取り組んできたが,少子化問題のほか,通学区に関する課題,校舎などの施設設備の経年劣化問題などを抱え,質の高い教育を推進するうえで抜本的な施策の改革の必要性を感じていた。また,平成14年11月には,三原市行財政改善懇談会から,「行財政改善に向けての提言」として「保育所,幼稚園,小・中学校の適正配置については,住民理解のもとに,統廃合,幼保一元化等を検討されたい」という答申が出された。
 これらの課題及び行財政懇談会答申に応えるため,学校経営の効率化だけでなく,特色ある学校づくり,子どもたちにとってより充実した教育環境の提供,保護者の学校選択機会の拡大,学校規模や地域との関わりなどを総合的に判断する「三原市学校適正配置検討委員会」が,平成15年5月に設置された。
 三原市学校適正配置検討委員会では,市民アンケートを実施し,広く市民の意識や意見を探るとともに,これまでの三原市立学校の現状をふまえ,今後の小中学校のあり方について検討してきた。ここに,これまでの検討内容をまとめ,三原市教育委員会に対し,今後の基本的な考え方を提言することにした。
 この報告書をもとに,次世代を担う子どもたちに,よりよい教育を提供するための諸施策が実施されることを期待する。

I.三原市立小中学校の配置に係る現状と課題

 三原市は東西・南北ともに約20キロメートルにわたる市域を有し,面積は約200平方キロメートルである。地形は山間部から島嶼部まで複雑に入り組んでいる。市域の大半は山林・農地・工業用地であり,市の面積の1割に満たない宅地は中心部の市街地に集中しているほか,谷間の河川沿い,あるいは山の迫る海岸沿いに散在している。その中に各小中学校が配置されている。

I-1 学校の配置と通学区域について

I-1-(1) 小学校について

 小学校は平成15年現在,18校配置 され,児童のほとんどは徒歩通学している。通学時間はおおむね30分以内であるが,なかには1時間近くかけて徒歩で登下校する児童やバス通学の児童もいる。また,小学校の統合が行われた鷺浦町ではスクールバスの運行が行われている。

I-1-(2) 中学校について

 中学校は8校 配置され,そのうち第四中学校・幸崎中学校・鷺浦中学校の3校は,それぞれ小学校1校のみの卒業生から構成されており,通学区は小学校と同一である。その他は複数の小学校区を合わせた通学区を持っている。第一中学校は2小学校から,第二中学校・第三中学校・宮浦中学校の3校は3小学校から(調整区域 を除く),第五中学校の場合は,小学校6校を合わせた通学区域を持っている。
ただし,そのなかには,小学校の通学区とは異なった境界を持つ中学校もあり,同一小学校の卒業生がすべて同じ中学校に進むとは限らない地域も存在する。中学校の生徒の大半は,徒歩または自転車通学をしているが,第三中学校の通学区となっている八幡町内の生徒など,バス通学をしている場合もある。なお八幡町内の中学生に関しては,隣接する御調町の御調町立御調中学校への通学が認められている。  
 第二中学校は,長年にわたり,校舎が校区外にある状態が続いていたが,平成15年4月校区内に新築移転したため,多くの生徒にとって,通学距離の短縮が実現した。

I-1-(3) 幼稚園について

 幼稚園は現在15園配置され,そのうち13園は小学校に併設し,小学校の敷地内あるいは,隣接地に設置されている。また,小学校から独立した園は2園ある。いずれも通園区域は設定されておらず,保護者が市内在住であれば,どの幼稚園にも子どもを通わせることが可能になっている。なお,15園のほかに,小学校併設園が2園あるが,現在休園中である。

I-1-(4) 通学区域の弾力化について

 小中学校の通学区域 に関しては,平成15年2月28日に三原市立学校通学区域制度運用検討委員会(以下「通学制度運用検討委員会」という。)からの報告書 において,通学区域の弾力化に向けての提言がなされている。

I-2 学校規模(児童生徒数・学級数)について

I-2-(1) 小学校について

 市立小学校の児童数は昭和57年の8,238名をピーク に徐々に減少し,平成15年5月現在では,3,964名と半数以下となっている。
 平成15年5月現在 で,市内18小学校のうち,児童数600名以上の学校は1校のみで,100名以下の学校が7校ある。学級数で見ると,6学年すべて2クラス以上の学校は6校で,複式学級を持つ学校も4校ある。そのうち2校は完全複式(1・2学年,3・4学年,5・6学年がそれぞれ1学級)となっており,比較的小規模校が多い。

I-2-(2) 中学校について

 中学校も昭和61年の4,087名を最高 に,平成15年5月現在の2,033名と半減している。8校中生徒数500名を超えるのは1校,3校が300名から400名,3校が100名から200名,残る1校は全校生徒18名となっており,差が大きい。学級数では,各学年3学級以上の学校が4校,各学年2学級程度(一部1学級)の学校が2校,学年1学級のみの学校が2校となっている。

I-2-(3) 幼稚園について

 幼稚園は1園のみ4歳児・5歳児とも2クラスで,ほかは9園が単学級,5園が複式学級となっている。複式5園のうち,八幡幼稚園と鷺浦幼稚園の2園では,近隣に保育所などの施設がないため,平成15年度より3歳児保育の試行を始めている。
 なお市内には,三原市立の学校のほかに,国立大学附属の幼稚園(155名)・小学校(463名)・中学校(244名)と私立の中学校1校(146名)が存在している。

I-2-(4) 小規模特認校制度について

 鷺浦小学校・鷺浦中学校については,平成14年4月から小規模特認校制度が導入され,通学区域外からの通学希望児童生徒を受け入れている。現在5名の児童生徒がこの制度により通学している。

I-3 三原市立小中学校の適正配置に係る課題

 学校教育法施行規則第17条及び第55条に,小中学校の「学級数は12学級以上18学級以下を標準とする」とある。この規定によると,小学校では各学年2~3学級,中学校では4~6学級で構成される学校が標準ということになる。これを児童生徒数の面から見ると,小学校は246人 ~720人,中学校では363人~720人の範囲にあたる。
この規定を適正規模と考えて三原市にあてはめてみると,小学校では6校から16校,中学校では3校から6校あればよいという計算になる。しかし,実際には,小学校18校,中学校8校であり,これは,小学校中学校ともに,比較的小規模な学校が市内に散在していることを示している。
なお,三原市内の小中学校のうち,標準とされる12~18学級の範囲にある学校は,小学校6校,中学校では1校のみである。その他の学校はすべて11学級以下であり,規定の範囲を超える19学級以上の学校は小中とも1校もない。
 教育的な面からみると,小規模の学校・学級では子ども同士の切磋琢磨の機会が減少することや,教科においても一定数の集団を必要とする音楽における合唱・合奏,体育における球技やダンスなどで十分な教育効果が発揮されにくい現象が起こることが予想される。また,小学校では,専科の教員による授業やティームティーチングなど,中学校でも,学級内を習熟度別に分けての授業や複数のグループに別れての調査・体験学習の機会が増える傾向にあり,ある程度の教員数が必要となる。しかし,教員の配当数は学級数によって決まるため,小規模の学校ではこれらの取り組みの実現が困難となり,今後,教育環境が低下することも予想される。
財政的な面から見ると,学校の維持管理運営にかかる費用は学校規模にかかわらずある程度必要であり,学校数が多い分,1校あたり配分される予算は小さくなると想定される。また,市内小中学校の校舎などは建築後30年を超えてきており, 耐震や防犯といった安全面や教育内容の変化に伴う機能の面からみて,計画的な改築をしていく必要があるが,今後の建て替え工事や改修工事に係る経費は莫大なものになることが予想される。そのため,健全財政運営という観点から,限られた予算の範囲内での執行が要求される。
 以上,教育的な面からも財政的な面からも,今後,児童生徒に十分な教育環境を提供することが困難になるという可能性が高い。
ここに,学校の統廃合及び通学区の改編を含む学校適正配置を実施し,これらの問題を解決しようという動きが出てくる。
 しかしながら,現在ある各学校は,小学校では100年以上,中学校でも50年以上の歴史や伝統を誇るものも多くあり,小規模校であっても,それぞれの地域住民のバックアップによって,地域の文化・自然を取り入れた特色ある教育を展開し優れた成果を上げている学校もある。
そういった学校が適正配置の名のもとに統廃合によってなくなってしまうことは,子どもと地域との結びつきが弱くなるという問題や遠距離通学を余儀なくされ,保護者と子どもの負担が増えるという問題に加え,これまで学校を核として形成されていた地域コミュニティへの影響など,新たな課題も考えられる。
 そこで,三原市学校適正配置検討委員会では,学校の適正配置についての市民の意識や意見を探るためアンケート調査を行い,検討の参考にすることにした。

II.アンケート結果から見る市民の意識

II-1 アンケート調査の概要

II-1-(1) アンケートの目的

 三原市立小中学校の適正配置を検討するにあたり,適正配置にかかわる市民の意識や意見を明らかにする。

II-1-(2) アンケートの実施方法等

(1)作成 三原市学校適正配置検討委員会
(2)対象 三原市に住民票のある成人(平成15年7月31日現在で満20歳以上)
(3)抽出 層化抽出法(町別・男女別・年齢階層別人口比例割当法)
    (年齢階層は10歳単位。ただし,70歳以上は1階層とする)
(4)人数 5,048人
(5)期間 平成15年8月11日~8月25日
(6)方法 郵送によるアンケート発送・回収(回収先 三原市教育委員会教育振興課)

II-1-(3) アンケートの質問内容

(1)回答者自身について
問1 性別について    問2 年齢について   問3 居住区域について
問4 小学校区について  問5 家族(子どもの有無)について
(2)望ましい学校規模・学級規模について
問6 小学校の学級数について    問7 小学校の学級人数について
問8 中学校の学級数について    問9 中学校の学級人数について
(3)児童生徒にとって望ましい通学時間・通学方法について
問10 小学生の通学時間について   問11 小学生の通学方法について
問12 中学生の通学時間について   問13 中学生の通学方法について
(4)通学区域制度の弾力的運用および学校の適正配置について
問14 通学区域制度の弾力的運用について
問15 学校の適正配置について
(5)理想とするこれからの三原市の学校について
問16 学校への人材配置について
問17 学校の施設・設備の充実について
問18 学校の特色ある教育について

II-1-(4) アンケートの回収結果

(1)発送数 5,048(未着数23)     
(2)有効数 5,025(発送数-未着数)
(3)回収数 1,866(自由記述欄への記入数801)
(4)回収率 37.13%(回収数/有効数)

II-1-(5) アンケート結果の集計・分析にあたって

 アンケート結果の集計にあたっては,全回答の単純集計のほか,年齢階層別などのクロス集計も行い,分析を試みた。その中で,回答者の居住区域にある小学校規模によって意見に違いが見られるかどうかを検証するため,回答者を次の3グループ に分類し,クロス集計した。
(1)大規模校 "田野浦・南・西・沼田東・中之町・三原"の各小学校区に居住する回答者
(2)中規模校 "糸崎・幸崎・須波・小坂・小泉・沼田西"の各小学校区に居住する回答者
(3)小規模校 "深・木原・沼田・高坂・八幡・鷺浦"の各小学校区に居住する回答者

II-2 市民の意識

 今回の市民アンケートは,市内全域の,あらゆる年齢層から満遍なく回答を得ることができ,学校教育や学校の適正配置に対する市民の意識の反映として,信頼性の高いものであるといえよう。また,回答の約40%には自由記述の欄にも意見等が書かれており,市民の教育に対する高い関心がうかがわれる。
 アンケート結果の分析から,市民の意識をまとめると,次のようなことが言える。

II-2-(1) 学年あたりの学級数は,法令にある標準の学級数が望ましい
(小学校では,2~3学級,中学校では,4~6学級)

 小学校では,全体の70%を超える回答が2~3学級を選択しているが,小規模校を抱える地域の回答は2~3学級が46%,1学級が35%である。
 中学校では,全体回答の50%以上が4~6学級,40%弱が2~3学級を選択しているが,中規模・小規模校を抱える地域では,4~6学級より2~3学級を選択する回答のほうが多い。

II-2-(2) 学級の児童生徒数は,法令の人数よりも少ない人数が望ましい
(1学級30人程度,あるいは,それ以下の人数)

 小学校では,全体の61%が30人程度,24%が20人程度を選択しているが,小規模校を抱える地域では,順位は変わらないが,30人程度が48%,20人程度が38%とその差が小さい。
 中学校では,規模にかかわらず,全体の60%以上が,30人程度が望ましいという回答である。

II-2-(3) 児童生徒の通学時間・通学方法は,小学生は徒歩で30分以内,中学生は徒歩または自転車で30分以内が望ましい

 小学校では,1位30分以内と2位15分以内の双方で80%を超えている。また,徒歩通学を望む回答は90%を超えている。
 中学校では,1位が30分以内で57%,2位は45分以内で21%である。通学方法に関しては,徒歩と自転車がほぼ同じで,ともに70%を超えている。

II-2-(4) 通学区域制度については,現行よりも弾力化を進めた方がよい

 1位はできるだけ弾力化で34.6%,2位は現行に工夫を加える程度で25.2%,3位は現行通りで24.4%,4位は完全自由化で10.8%である。

II-2-(5) 学校の配置については通学区域の弾力的運用を進めて,現行の配置を維持するのが望ましい

 1位は弾力的運用を進めて現行を維持の42.6%で,2位は全市的に適正配置を検討の19.1%,3位は規模を満たさなくなった学校から適正配置を検討の18.6%,4位は現行維持の13.6%である。

II-2-(6) これからの三原の学校に主に望むもの

(1) 学習面・生活面での指導力の高い教員の配置
(2) トイレなど衛生面の施設設備の充実や地域住民とともに利用できる施設の充実
(3) 社会性や道徳性を育てるこころの教育
 その他,クロス集計の結果から,小規模の学校を抱える地域の住民は,小規模の学級数や少ない学級人数を望む傾向が強く,若い世代は自然環境や情報教育に関心が高いなど,回答は,回答者自身の身近な課題を反映する傾向が強いことが改めて確認できた。
 以上の結果を総合的に見ると,市民は,学校の適正配置に関しては必ずしも積極的ではないが,小規模化してきている現状の学校規模・学級規模を好ましい状況とは見ていないことがうかがえる。こうした状況に対して,通学区域の弾力的運用を進めることで現行の学校配置を維持するという意見が最も多いが,全市的にあるいは標準規模を満たさなくなった学校から適正配置を検討するという意見も合計では前者の意見に近い割合となっている。

III 三原市における学校適正配置にむけての提言

 検討委員会では,現状と課題から,また,市民アンケートの結果から,三原市においては,次のような基本的な考え方に立って学校の適正配置を進めることが望ましいとの結論に至った。三原市教育委員会においては,これらの基本的な考え方を尊重して,教育諸施策を推進されるよう提言する。

III-1 学校適正配置の理念

 三原市における学校適正配置は,次世代を担う子どもたちに最良の教育条件を整えるという観点から考えていくことが大切である。すなわち,教育予算削減のため,あるいは少子化に伴う学校規模の縮小化への対応のためといった消極的な理由からではなく,特色ある学校教育の推進,地域に開かれた学校づくりの実現,教職員の指導力の向上,学校の施設・設備の充実といった,教育都市三原市の理想とする学校教育構想の一環として,適正配置を考えていくことが必要である。したがって,具体的な適正配置の検討に当たっては,児童生徒数の減少をもって市内全域で画一的に進めるといった方向ではなく,「三原方式」とでも呼ぶべき,それぞれの地域の実態に応じた創意工夫が求められる。

III-2 適正配置によって実現をめざす学校のあり方

 三原市の学校適正配置を進める際,地域の実態を十分考慮に入れたうえで,次の4項目が実現できるよう努力されたい。
(1) 1クラスは30人程度,1学年は2クラス以上を基準に
(2) 児童生徒の通学時間は,30分程度をめやすに
(3) 小中学校の通学区域は,弾力的に運用できるように
(4) よりよい教育環境となるように

III-2-(1) 1クラスは30人程度,1学年は2クラス以上を基準に

 多くの市民の理想とする学校規模は,小学校であれば,1学年2~3学級で,1学級の人数は30人程度,中学校は1学年2~6学級で,1学級30人程度である。
小学校では,1学級あたり20人程度が望ましいとする回答も多く,他の自治体でのアンケートの結果とも一致している。しかしながら集団活動を要する授業の実施なども考慮すると,1クラス30人程度,1学年2クラス以上の基準を下回らない程度の規模が,一人一人の児童生徒にも目が行き届き,子どもたちが集団としての活動もできる数値といえよう。

III-2-(2) 通学時間は30分程度をめやすに

 通学時間は,小学生は徒歩で30分以内,中学生は徒歩あるいは自転車で30分以内が適当と考える。これは,現状の配置での通学時間・通学方法と大差ないといえる。今後,適正配置によって,学校統廃合という行政措置によりこの基準を大幅に超える場合には,小学生,中学生とも公共交通機関の利用に対する配慮,もしくはスクールバスの運行を検討されたい。

III-2-(3) 小中学校の通学区域は,弾力的に運用できるように

 通学区域についての市民の意向は,「三原市の実態に応じてできるだけ弾力化するのが良い」が第1位という結果であった。昨年度,通学制度運用検討委員会が保護者対象に行ったアンケートでは,「現行制度に工夫を加える程度で良い」が第1位 だったことと比較すると,やや弾力化推進への意向が強いといえる。今後,各学校が,それぞれ特色ある教育を推進することにより,学校選択への要望も高まると考えられるので,適正配置の問題とは別に,通学区域の弾力的運用は積極的に推進すべきである。
 ただし,全国の自治体のいくつかで実施されている学校選択の完全自由化については,市民の多くは,そこまでは望んでいない。これは,市内に通学区を設けていない国立や私立の学校があるため,児童生徒や保護者に選択の余地があることも影響していると思われる。

III-2-(4) よりよい教育環境や教育条件となるように

 具体的に適正配置の実施が望ましいと考えられる学校・地域に対しては,子どもたちにとって,よりよい教育環境を提供するためにはどうするべきかなど,慎重な検討を地域住民や保護者とともに進める必要がある。
 アンケートの後半では,理想とする三原の学校についての問いを設けたが,その結果,指導力の高い教員の配置,トイレを始めとする学校の施設・設備の充実,社会性や道徳性を高める教育に強い関心があることがうかがえる。適正配置を実施するうえでも,これらの要望に応えることが地域住民の信頼を高め,地域に支えられた学校づくりに欠かせない要素であると考える。
 また,現状では,学校規模においては特に問題がなくても,通学の安全面や騒音など環境面が気になる学校,運動場の広さが不十分と思われる学校,校舎の経年劣化が著しい学校など,教育環境に問題があると考えられる学校も散見され,このことも場合によっては,適正配置すべき条件の一つとして,例えば,新たな場所に学校を設置し,環境の改善を図ることも考えられたい。

III-3 適正配置実施にあたっての具体的な留意点

 具体的に学校の適正配置を実施するにあたっては,III-2の「適正配置によって実現をめざす学校のあり方」を基準にするとともに,次の6項目に留意しながら,進められたい。
(1) 速やかに通学区域の弾力化を
(2) 安心して通学できる方策を
(3) 特色ある教育の実践を大切に
(4) 施設・設備は市民のための有効な活用を
(5) 市町合併について
(6) 情報の共有について

III-3-(1) 速やかに通学区域の弾力化を

 今回のアンケートの結果である,「学校の統廃合を含む適正配置には慎重だが,通学区域の弾力化については,回答者の7割近くが望んでいる」という市民の意識を重視しなければならない。
 通学制度運用検討委員会の提言のうち,「短期的な課題に関する提言」は15年度当初に実現された。そこで,通学区域の弾力化については,通学制度運用検討委員会の報告書 の「中期的な課題に関する提言」を踏まえて,次の例を参考に,三原市の実態にあった制度を検討し,学区審議会に諮るとともに,17年度当初には運用を開始されたい。
(1) 小学校の選択グループ制度
 同一中学校区内にある小学校ならば,どの学校にも通学できる学校自由選択制度
(2) 小学校の選択グループ制の補完制度
 中学校区内に1小学校しかない場合には,「小学校の選択グループ制」の適用外となってしまうため,制度を補完するために隣接する中学校区内の小学校にも通学できる学校自由選択制度
(3) 中学校の選択グループ制度
 隣接中学校でグループを編成し,複数の中学校から選択して通学できる学校自由選択制度
(4) 学区外通学制度の緩和
 転居後も元の学校に卒業時まで通学できる制度やクラブ活動,総合的な学習の時間などでの特色ある教育活動を理由とした学区外通学の許可条件緩和制度
(5) 通学距離による学校選択制度
 通学区域外であっても通学距離・通学時間から見て最短の学校がある場合,その学校に通学できる学区外通学の条件緩和ないしは調整区域の拡大を行う制度
(6) 小規模特認校制度の拡充
 鷺浦小学校・鷺浦中学校に導入されている小規模特認校制度を導入可能な小規模校に導入・拡充する制度

III-3-(2) 安心して通学できる方策を

 学校の統廃合などにより,適正配置が実施された場合,現状より遠くの学校に通わなくてはならない場合も考えられるが,その際には,長時間の通学による児童生徒の肉体的負担,保護者の経済的負担,安全上の問題などを解決しなくてはならない。スクールバスの運行や公共交通機関の利用などその地域の実態に合わせた施策の工夫が望まれる。また,子どもたちを守り育てる地域コミュニティの育成も重要である。

III-3-(3) 特色ある教育の実践を大切に

 市内には,理想とする人数・学級数に達していない小規模の学校も多く存在する。これらの学校では,地域の人材を活用したり,地域の自然,郷土の芸能を取り入れたりする学習が行われ,地域に根ざした特色ある教育が推進されている場合もある。
 このような場合,適正配置により学校の統廃合などが実施されても,地域コミュニティが一体となって学校を支える態勢を構築し,特色ある教育を維持・発展させるよう工夫することが望まれる。そのために,学校新築の場合には,生涯学習に視点を置き,子どもたちと地域の人々が交流できるような措置を講じることも配慮されたい。

III-3-(4) 施設・設備は市民のための有効な活用を

 新設校に交流の場を設けることに加え,適正配置の結果,学校としての機能を終える施設についても,子どもを含めた地域コミュニティの場としての活用が望まれる。
 アンケートでは,後施設・敷地は「地域住民の生涯学習のための施設」として活用することが望ましいという回答が多かったが,全国的には,研修宿泊施設・高齢者福祉施設・体育レクリエーション施設・子育て支援施設・体験型工房・博物館・図書館・公園・コミュニティセンターなどやその複合施設など様々な活用法が報告されている。運営も地方自治体・地域・各種法人・NPOなど各種ある。これらの例を参考に,より市民にとって有効な活用法を工夫することが大事である。

III-3-(5) 市町合併について

 三原市でも3町との合併が計画されているが,これまで,自宅の近くに学校があっても,自治体の境界線があることによって,通学できない児童生徒もいた経緯から,合併を機会に通学区域の見直し作業を進められたい。また,新市での適正配置や通学区域を検討する部署または機関についても必要であると考えられるので,できるだけ速やかに準備を進め,新市の市民にとってよりよい通学制度や適正配置について検討するように努められたい。

III-3-(6) 情報の共有について

 学校の適正配置は地域住民の理解と支援がなければ,円滑に進めることはできない。今後児童生徒数はどのように推移するのか,現状での問題点は何か,適正配置の実施によって,子どもたちにどのような教育が保障されるのか,子どもたちの生活がどの程度変化するのか,後施設はどのように活用すべきかなど,地域住民にできるだけ具体的に情報を提示することや,全国や近隣での適正配置の例を紹介することと同時に,地域の意見や特質,課題などの情報把握に努めなければならない。これらは,市のホームページや広報などで情報提供するだけでなく,計画的・段階的に説明会や公聴会などにより情報収集をおこない,最善の道を探ることが大事である。
 また,行政としては,適正配置を実施することによって新たに形成される新たな学校を中心とした地域コミュニティづくりの支援にも努められたい。

おわりに

 広島県は,全国的に見ても小規模校が多く,県内各地の自治体で通学区域の弾力化や学校の統廃合が進められてきている。本検討委員会では,それらの情報も参考にしつつ,市民アンケートの結果に基づきながら,三原市における学校適正配置の問題について,三原市の地域の実態を考慮しつつ検討を重ねてきた。そして,具体的な適正配置の計画を立案する上での前提となる基本的な考え方について,三原市教育委員会に対して提言することになった。
 本報告書の内容や提言をすみやかに具現化することによって,三原市の子どもたちにとって最良の教育条件が整備されることを要望したい。そして,子どもたちが成人した時に,「三原市に生まれ育って良かった」「三原市の学校に通えて良かった」と振り返ることができるような,質の高い学校教育が推進されることを期待したい。
 最後に,郵送によるアンケートにもかかわらず,37%を超える回答をいただいた多くの市民の皆様に深く感謝したい。

会議録

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