○三原市手話言語条例

令和5年6月30日

条例第29号

言語は、お互いの気持ちを理解し合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。手話言語は、音声言語である日本語と異なる文法体系をもった独自の言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者(聴覚の障害のため、手話を意思の疎通の方法として用いる者をいう。以下同じ。)は、手話言語で物事を考え、コミュニケーションを図り、大切な言語として手話言語を守り育んできた。

しかしながら、過去には、手話が言語として認められず、ろう教育において口話教育が推進され、手話の使用が禁止されたことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることやコミュニケーションをとることが難しく、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。

こうした中で、「障害者の権利に関する条約」や「障害者基本法」において、手話は言語として明記されたものの、いまだに言語としての手話への理解が十分であるとはいえない状況にある。

手話言語が音声言語と対等な言語であるとの認識に基づき、手話言語への理解の促進及び手話言語の普及により、ろう者への理解を広げるとともに誰もが安心して暮らし、社会に参加し、互いに支え合うことができる共生社会の実現をめざし、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語への理解の促進及び手話言語の普及並びに地域において手話言語を使用しやすい環境を構築することに関し、基本理念を定め、市及び市民の責務及び役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、全ての市民が聴覚の有無によって分け隔てられることなく共生することができる地域社会を実現することを目的とする。

(基本理念)

第2条 ろう者が、自立した日常生活を営み、地域社会に参加し、全ての市民と相互に人格と個性を尊重し合いながら、心豊かに共生することができる地域社会の実現をめざすものとする。

2 手話が言語であることを認識し、手話言語への理解の促進及び手話言語の普及を図り、手話言語でコミュニケーションを図りやすい環境を構築するものとする。

3 ろう者は、手話言語による意思疎通を円滑に図る権利を有し、その権利は尊重されなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に則り、手話言語への理解の促進及び手話言語の普及を図り、ろう者のあらゆる場面での手話言語による意思疎通並びに自立した日常生活及び地域における社会参加の機会を保障するため、必要な施策を講ずるものとする。

(市民の役割)

第4条 市民は、基本理念に則り、聴覚の有無にかかわらず地域社会で共に暮らす一員として、手話言語についての市の施策に協力し、暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、基本理念に則り、市の施策に協力するとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(施策の策定及び推進)

第6条 市は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項に規定する障害者のための施策に関する基本的な計画において、次の各号に掲げる施策について定め、これを総合的かつ計画的に実施するものとする。

(1) 手話言語への理解の促進及び手話言語の普及を図るための施策

(2) 市民が手話言語に触れ、関心を深めることができるよう学ぶ機会を拡大するための施策

(3) 市民が意思疎通の手段として手話言語を選択することが容易にでき、かつ、手話言語を使用しやすい環境の構築のための施策

(4) 手話通訳者の配置の拡充及び処遇改善等手話言語による意思疎通支援者のための施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために市長が必要と認める施策

2 市は、前項に規定する施策の推進に当たっては、ろう者、手話通訳者その他関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならない。

(委任)

第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

三原市手話言語条例

令和5年6月30日 条例第29号

(令和5年6月30日施行)

体系情報
第8編 生/第1章 社会福祉/第5節 障害者福祉
沿革情報
令和5年6月30日 条例第29号