教育委員会委員会学校給食懇話会
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今後の学校給食のあり方について(報告書)
三原市行財政改善懇談会の「行財政改善に向けての提言」(平成14年11月)を受け,平成15年7月から「三原市学校給食懇話会」において,学校給食のあり方について,安全や効率の問題を中心に総合的に検討してきました。懇話会は,その結果を平成16年2月10日に報告書としてとりまとめました。

はじめに

1 三原市における学校給食の現状と課題
 (1)学校給食のあゆみ
 (2)学校給食の必要性について
 (3)給食調理場について
 (4)ランチルームについて
 (5)栄養士・給食調理員について

2 今後の学校給食に向けての提言
 (1)施設設備について
 (2)調理場方式について
 (3)調理場の数について
 (4)中学校への導入について
 (5)調理器機について
 (6)運営方式について
 (7)給食指導・食の教育について
 (8)関係者のコンセンサスについて

3 学校給食懇話会の活動
 (1)委員会開催経過
 (2)委員名簿

おわりに


はじめに

 平成14年11月に三原市行財政改善懇談会から,「行財政改善に向けての提言」として「給食の調理業務については,保育所・小学校の実情を勘案し,早急にセンター化や民間委託を含めて,効率的な運用のあり方を検討されたい」という答申が出された。
 この答申を受け,平成15年7月に「三原市学校給食懇話会」を設置し,学校給食のあり方について,安全や効率の問題を中心に,教育的側面なども含め,総合的に検討してきた。
 三原市における学校給食は,各小学校附属の調理場で作られており(鷺浦町のみ,小中の共同調理場),いずれも小規模で経年劣化の問題をかかえている。また,衛生面でも文部科学省制定の「学校給食衛生管理の基準」(平成9年4月1日制定,平成15年3月31日一部改訂)に沿っていない点も多くある。
 現在まで,食中毒など重大な事故を起こすことなくきているが,これは,主に保健所の指導や学校栄養士・給食調理員を中心とした人的な努力の成果であり,施設・設備の劣化によって,今後も安全性を維持することは厳しい状況にある。
 ここに,これまでの学校給食の現状をふまえ,今後の学校給食のあり方について,検討してきたことをまとめ,三原市教育委員会に対し,具体的方策を提言することとした。
 この報告書をもとに,次世代を担う子どもたちに,よりよい学校給食を提供するための諸施策が実施されることを期待する。


1 三原市における学校給食の現状と課題

(1) 学校給食のあゆみ
 三原市における学校給食は,大正・昭和初期に,一部の子どもに対して食事を提供する場合があったようであるが,詳しい資料は残っていない。
 三原小学校では,昭和7年に市立高女生徒の調理によって,50名程度の児童に昼食時の副食を提供したところからスタートし,徐々に人数を増やし,戦中戦後の配給のなかった数ヶ月間を除いて,500名程度の規模で給食が継続された。戦後は,昭和22年7月から,月平均9回程度であるが,全員給食(約2550名)が実施されていた。
 他の学校でも,同じころ,各校の保護者・職員の努力や児童自らの調理により,不足しがちな栄養の補給を行っていたようである。
 パン・牛乳・副食のそろった完全給食が始まるのは,昭和25年であり,昭和27年度までに市内中心部の小学校で導入された。しかし,合併によって三原市に編入された周辺部の学校は,農村地帯であり,市内中心部に比べて食糧事情が良かったことなどさまざまな要因によって導入が遅れ,市内全小学校で実施は,昭和48年まで待たなければならない。
 学校給食が開始された当初は,戦後の食糧難の時期でもあり,児童の栄養補給や体位向上が主目的であったと考えられる。その後徐々に,PTAの援助や市の施策により,給食施設設備の充実が図られ,全国的にも完全給食が普及してくると,教育としての給食の意義が認識されるようになり,昭和29年に制定された「学校給食法」では,「教育の目的を実現するために,1 日常生活における食事について,正しい理解と望ましい習慣を養うこと。2 学校生活を豊かにし,明るい社交性を養うこと。3 食生活の合理化,栄養の改善及び健康の増進を図ること。4 食糧の生産,配分及び消費について正しい理解に導くこと。」と明記されるとともに,設置者の責務が示された。
 三原市においても関係者の努力により,ランチルームの設置,調理施設・設備の整備,より充実した献立作成や児童生徒への指導が行われてきた。しかし,外食産業の拡大,加工食品の普及,食習慣の多様化など子どもたちを巡る我が国の食生活の著しい変化は児童生徒の食生活にも影響を及ぼしている。
現在,食物アレルギー,肥満,偏食,拒食過食,栄養のアンバランスなど多くの無視できない課題が出てきており,「食の教育」の重要性が再認識されるようになった。
 学校給食に最も大きな衝撃を与えたのは,平成8年の腸管出血性大腸菌O-157による大規模な食中毒事件であった。この事件以後,学校給食は安全・衛生管理の一層の強化が図られ,ハード面では,給食調理場のドライ運用のための改修,ソフト面では,調理従事者の研修の充実などの取り組みが行われてきた。

(2) 学校給食の必要性について
 現在市内の学校給食は,年間約190回実施されている。これは,児童生徒の年間千回を超える全食事の2割以下で,決して大きな比率ではないが,昨今の食の危機と呼ばれる社会事象や家庭の教育力の低下傾向を勘案したとき,学校給食の持つ意義は大きいと考えられる。
 もとより,児童生徒の健康管理のもととなる食習慣の確立は家庭でなされるべきものであるが,成長期にある子どもたちに,学校給食のさまざまな献立により味覚を発達させたり,集団で味わう楽しさを経験させたり,正しい食についての知識を習得し,生活習慣病を自ら予防させたり,生涯にわたって健康の保持増進に努める意欲と能力を培うための指導を行うことは,学校教育の責務の一つであろう。
 また,学校給食は,食べ物の大切さや生産者・調理者などへの感謝の念を養う場にもなるとともに,問題行動を繰り返す子どもや「キレル・ムカツク・イラツク」子どもに正しい食事をさせたり,正しい食習慣をつけて更正させていく教育の場ともなる。
 このように,食の教育は健康や体力の向上だけでなく「こころの教育」にも大きな影響を与えるものと考える。食の形態がどのようなものになろうとも,児童生徒の健全な育成を図る上で,学校給食の果たす役割は重要である。

(3) 給食調理場について
 現在稼働している18か所の給食調理場は,昭和44年以降に各小学校の敷地内に建築されたもので,(鷺浦共同調理場のみ鷺浦中学校内に建設)すべてウェット方式である。
昭和50年代から60年代にかけては,米飯給食導入に伴う献立の改変に対応できる器機の整備などが行われてきた。米飯は現在,八幡小・鷺浦共同調理場で炊飯を実施している以外は,委託業者により搬入されている。
 また,平成8年度には,O-157事件の教訓を生かすため,保健所の指導により,大規模な改修を行い,ドライ運用により,安全・衛生管理に万全を期す努力を重ねてきているが,建物自体が建築後,古いものでは35年,新しいものでも15年以上経過しており,設備のドライシステム化への移行を含む抜本的な見直しが必要な時期にきている。

(4) ランチルームについて
 市内18小学校中,半数にあたる9校に,ランチルームが設置されている。
 これらは,初めからランチルームとして建築されたものもあれば,普通教室を改装したものもありさまざまである。このうち,小規模校である高坂小学校,八幡小学校,鷺浦小学校の3施設については,全校児童を収容できるランチルームであるが,他は,1学級あるいは2学級のみの児童が利用できる広さしかなく,各校でローテーションを組むなどの工夫をしながら利用されている。
 ランチルームでは,教員とともに栄養士や調理員が児童の食事のようすを観察したり,献立や食材に関する話をするなど,食の教育が行われている。
その他,発表会や集会など多目的ホールとしての利用も図られているが,目的外に利用した後は,換気や消毒をしっかりしておく必要がある。
 ランチルームは,機能面でも管理面でも普通教室よりも優れた点が多くあり,未設置校はもちろん設置済みの学校でも,より収容人数の多いランチルームや食堂に相当する施設の設置が望まれる。

(5) 栄養士・給食調理員について
 現在栄養士は,三原・中之町・西・田野浦・南・沼田東の6小学校に各1名,鷺浦共同調理場に1名の計7名が配置されている。これは,国の最低基準を上回る数である。7名の県費栄養士は各配属校で給食や調理場の栄養・衛生管理にあたるだけでなく,市教育委員会の栄養士とともに,市全体の共通献立の立案と改善,給食指導のための研究や資料作成などに精力的に取り組んでいる。
 給食調理員は,食数に応じた規準に準じて,市費正規職員33名と継続雇用職員(市の再任用制度により,引き続き給食調理業務に従事する退職者)4名の計37名が配置されている。調理員は健康診断・検便を行うとともに,研修を重ね,安全でおいしい給食の提供に努めている。中学校では,鷺浦中学校以外はミルク給食のみであるため,栄養士・調理員は配置されていない。
 また,これは給食調理場の課題であるが,調理中は高温多湿にさらされ,休養室にも空調設備がないなど,労働環境は決して快適なものとはいえない。さらに,小規模校が多いため,一人職場が全調理場の半数を占めており,加重な緊張を感じる者もいる。
 国の調査によると,調理員一人当たりの人件費は直営では年平均461万円あまり,民間委託しているところでは265万円あまりとなっており,民間委託のほうがかなり低い。(「予算執行調査」財務省主計局,平成15年6月)
三原市の場合,常勤の37名以外にも,調理員が休んだときなどに備えて臨時の人員を多数確保しているが,この日々雇用職員にかかる経費が年間合計600万円ほどあり,今後の市財政を考えると,正規職員の人件費と併せて無視できない額となっている。
 三原市は,給食調理員など現業職員に関しては,欠員不補充の方針できており,
 今後,業務に熟練した職員から順に退職していくことを考えると,早急に対策を講じなくてはならない。

2 今後の学校給食に向けての提言

(1) 施設設備について
 市内の全ての給食調理場は建築年数も15年以上であり,設備・器機も旧式であるが,保健所等の指導のもと,改修工事や運用面での努力により,安全衛生を維持している。しかし,平成15年3月に一部改訂された「学校給食衛生管理の基準」(文部科学省)から見れば,より安全な学校給食を提供するための施設設備として,不十分な面も多い。
よって,将来にわたって,安全な給食を提供するために,早急に計画を立て,順次,完全ドライシステムの調理場を建設されたい。設計の際には,児童生徒による見学や研修室などの学習環境,また,負担の少ない作業動線や器機・休憩室・事務室・空調設備など労働環境にも留意されたい。

(2) 調理場方式について
 「学校給食衛生管理の基準」に適合する調理場を建設するには,現在の調理場よりも広い敷地が必要となる。現在地に立て替えが不可能な場合も多いので,学校敷地内に適当な場所がない場合,市有の遊休地など,適当な土地を求め,何校分かをまとめた共同給食調理場(給食センター)を計画されたい。
学校敷地内に土地が確保できる場合は,その学校に必要な食数分の施設ではなく,近隣の学校にも配送できる規模の「親子方式」の調理場を計画されたい。
 不要になった旧施設は,配食の受け入れ施設としての「配膳室」やランチルームに改造するなど有効に活用されたい。

(3) 調理場の数について
 県内にも1万食を超える大規模な共同調理場が存在し,市内1か所の共同調理場も不可能ではないが,三原市の場合,広範囲に学校が点在していて配送に時間がかかることや危機管理の面から見て,複数か所の調理場がふさわしいと考えられる。なお,その際,市町合併後の状況も見極めたうえで計画を立てられたい。

(4) 中学校への導入について
 現在,中学校への完全給食の導入は全国的には微増の傾向にある。また,合併予定の本郷町・久井町・大和町では,すでに導入されている。市内では,鷺浦中学校のみ導入されている。中学校への導入に関しては,ニーズを見極めたり,試行して反応を確かめたりするなどの工夫をして,最初の新調理場が建設されるまでに結論を出されたい。

(5) 調理器機について
 給食調理場で使用する器機にはさまざまなものがあり,それぞれ改良工夫がなされ,めざましく進歩している。また,動力や熱源には,ガス・重油・灯油・電気などがあり,それぞれに利点・欠点がある。安全を最優先に,イニシアルコスト・ランニングコスト・メンテナンス・使い勝手・耐用年数などよく吟味して決定されたい。

(6) 運営方式について
 現在,給食調理場の運営は,すべて直営で行っており,パンおよび米飯のみ民間業者に委託している。全国的には,調理・搬送・洗浄に関わる部分を中心に民間委託する例が増加している。
 民間委託すると,設置者にとっては人件費や労務管理が軽減されるという長所がある反面,学校の要望や学校栄養士の指示が直接に従事者に伝えられにくいという短所もある。
 このほかにも直営,民間委託それぞれの長所・短所があるが,健全な財政の面から,民間委託を前向きに検討されたい。また,業務に熟練した市費職員に加え,合併後に加わるであろう経験豊かな給食調理員の能力を有効に活用することを考えられたい。
 ただし,民間委託される場合には,複数の業者によるコンペティションを行うなどして,安全を第一に考え,学校給食の趣旨を十分理解し,設置者や学校の意向に協力する業者を慎重に選ばれたい。また,契約時に給食の質を落とさないことや,運営改善のための措置がとれることを明記した契約書を用意されたい。さらに,1社独占の状態が長く続くことなどによって弊害が出るおそれもあるため,競争性が確保されるよう,留意されたい。

(7) 給食指導・食の教育について
 センター化されても民間委託されても,教職員や栄養士・栄養教諭(中央教育審議会が計画中)が十分に活動・指導できるよう尽力されたい。
 また,食材については共同購入によるコスト面のスケールメリットを追求することも必要であるが,地産地消を取り入れるなど,食文化の継承発展に貢献するよう尽力されたい。

(8) 関係者のコンセンサスについて
 学校給食は,地域住民や保護者の協力の中から育った面を多分に持っており,計画を進めるにあたっては,教職員・保護者など関係者の十分なコンセンサスを得て,三原市の学校給食始まって以来ともいえる改革が円滑に実現するよう努力されたい。

3 学校給食懇話会の活動

(1) 委員会開催経過
年月日 内容
15年7月25日(金) 委員長・副委員長決定
事業の概要・日程案検討
現状確認
15年8月27日(水) 神石郡三和町学校共同調理場視察
三原市立中之町小学校給食調理場視察
給食調理場改善に関わる諸問題について協議
15年9月24日(水) 既存施設の修繕と新築との比較について
安全な施設のあり方について
地産地消について
自校方式と共同調理場方式との比較について
直営と民間委託の意義について
ランチルームの現状について
コストについて
15年10月27日(月) 報告書の骨子について協議
自校方式か共同調理場(給食センター)かについて
直営か民間委託かについて
中学校への導入について
付帯施設について
調理方式について
報告書原案について
15年12月8日(月) 報告書原案の検討
16年2月10日(火) 報告書提出


(2) 委員名簿

委員長 平 原  榮 元三原市学校給食会 会長
副委員長 岡 本 純 祥 三原市議会総務文教委員会 委員長
委員 松 田 政 明 尾三地域保健所 生活衛生課 課長
委員 松 浦 ゆう子 三原市立小学校長会 代表(中之町小学校)
委員 渡 辺 勝 二 三原市立中学校長会 代表(鷺浦中学校)
委員 森 野 千 恵 三原市PTA連合会 母親代表(沼田西小学校)
委員 伊 達  護 社団法人三原青年会議所 直前理事長
委員 藤 原 眞由美 三原パイロットクラブ 会長
委員 松 浦 秀 孝 連合広島三原地域協議会 議長
委員 植 木 章 弘 三原市教育委員会 教育長


おわりに

 三原市学校給食懇話会では,平成15年7月の発足以来,限られた時間の中で資料をもとに検討を重ねたり,給食調理場を視察するなど,精力的に協議を進め,この度あたえられたテーマについての提言を報告することができた。もちろん,学校給食に関する問題は広く,論議を十分に尽くしたともいえないし,時間的制約などから,食器や献立など言及できなかった点も多々ある。
 そのような中でも,委員の一致した思いは,三原の子どもたちへ安全を第一とした豊かな給食を提供したいということであった。
 市は教育以外にも,多くの行政課題を抱え,市全体を見通した財源の配分が必要であることは委員全員十分に理解しているが,報告をまとめるにあたり,最後に申し上げたいことは,将来の三原市を背負って立つ子どもたちにこそ,行政は最大限の努力をはらって,財政的措置をしていただきたいということである。その姿勢が具現化することにより,市民の理解や協力もさらに進むものと信じる。
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